展覧会のお知らせ

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2019年1月15日-28日

2012年4月27日金曜日

「春の野原」吉田健一


この対談の中で、金井美恵子さんは、もっとも好きな吉田健一の小説を「春の野原」だと語っておられます。
そうなると、当然読んでみたくなるのですが、この本、とても気が利いていてちゃんと収録されているんですね。
「吉田健一」河出書房出版

早速読んでみますと、これが実に不思議な小説でして、まず設定が、”英国に日本の小説を紹介する事になり、その翻訳をしたが、実はその小説が盗作だとわかり、翻訳者が英国に向かう飛行機の中で別なストーリーに書き直す”というもの。

構成も多重構造になっており、その魅力的な世界観に引き込まれます。
おもしろい小説には、早くその先に進みたいと思うものと、ずっとここに留まっていたいと思うものがありますが、この小説は典型的な後者です。

翻訳をしている最中、進捗をうかがいながら、出版社の社長がいろいろなものを付け届けしてくれる場面です。
「併しさういう譯で、つまり、低級な日本語を高級な英語に直してゐるという意味でも、高級な日本語を低級な外國人にも解るやうな言葉にしてゐるといふ意味でも、何れにしても、高級な仕事をやつてゐる人間としてこつちを尊敬してくれて、疊替へや襖の張り替へをやつてくれたのである。」
「春の野原」-吉田健一


「酒肴酒」吉田健一 光文社文庫

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